認知症とは
認知症とは、さまざまな脳の病気により脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶力、判断力など)が低下して社会生活に支障をきたした状態(およそ6か月以上継続)をいいます。認知症は病名ではなく、症状の集まりを意味する言葉です。
認知症の種類
認知症の種類にはいくつかありますが、主要なものとして下記の4つが挙げられます。
アルツハイマー型認知症
認知症として最も多いタイプです。脳の神経細胞が減り、委縮することで症状が現れる認知症です。記憶障害(もの忘れ)から始まることが多く、失語(音として聞こえていても話がわかりにくい、物の名前がわからないなど)や失認(視力は問題ないのに、目で見えた情報を形として把握し難い)、失行(手足の動きは問題ないのに今までできていた動作を行えない)などが目立つこともあります。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症と同じく脳の病的な変化によって引き起こされます。実際にはないものが見える幻覚や転びやすい、歩きにくいなどのパーキンソン症状、睡眠中に夢をみて叫んだりするなどの症状を伴うことがあります。どの症状が先に出てくるかは人によって異なります。
脳血管性認知症
脳梗塞、脳出血などの血管障害が原因で一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、発症する認知症です。脳血管障害を起こした場所によって症状は異なりますが麻痺などの体の症状を伴うことが少なくありません。また脳血管の閉塞や出血とともに、突然発症するという特徴があります。そのため症状が安定していると思っていたら、突発的に新たな症状が加わることもあり改善と悪化を繰り返しながら症状が進行します。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が目立って委縮することで発症する認知症です。性格変化や意欲低下などを生じる前頭葉症状と、言語障害などが起こる側頭葉症状があります。物を盗む等の反社会的行動、道徳観の低下、怒りやすくなるなどの人格変化や異常行動が認知症に先行します。また常同行動(同じ場所を周遊する・同じイスに座る)、落ち着きがない、同じフレーズを繰り返す反復言語やオウム返しなどの症状もみられます。
認知症の症状
認知症の症状は、大きく分けると2つの症状があります。
記憶障害を中心とした認知症の方に必ず見られる中核症状と、本人の性格や環境の変化などの相互作用の結果として生じる行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)です。
中核症状
代表的な症状は記憶障害です。特に、直前に起きたことを忘れるような症状(短期記憶障害)が顕著です。その一方で古い過去の記憶はよく残りますが、症状の進行とともにそれらも失われる傾向があります。また筋道を立てた思考ができなくなる判断力の低下、時間や場所・名前などが分からなくなる見当識障害などがあります。
行動・心理症状(BPSD)
脳の障害により生じる精神症状や行動の異常をいいます。具体的には、妄想・気分の落ち込み・不安などの精神症状と、徘徊・興奮などの行動の異常が見られます。脳の障害を背景にその人の性格や環境、人間関係などが絡み合って起きるため症状は人それぞれ異なり、接する人や日時によっても大きく変わってきます。
認知症の治療
認知症の治療は、薬物療法と心理療法を併用して行っていきます。
脳血管性認知症等の外科的治療の対象となる疾患を除き、認知症を完全に治す治療法はまだありません。しかしながら病状の進行を遅らせることは可能であり、残された機能を維持しながら不安・不眠など日常生活の支障となる症状を軽減することが治療の目標となります。
薬物療法
認知症の中核症状に対しては、抗認知症薬を用います。行動・心理症状(BPSD)の改善を目的として不安や幻覚・妄想、徘徊には抗不安薬や抗精神病薬などを、睡眠障害には睡眠薬などを用います。怒りっぽさやイライラ感に漢方薬を用いることもあります。
心理療法
心理療法は、脳の活性化や残存機能を出来る限り長く維持することを目標に行います。見当識への刺激を与えることで、認知機能の低下を防ぐリアリティ・オリエンテーションや、昔の記憶を思い出し、人に話したり聞いたりすることで認知機能の向上に効果が期待される回想法などの心理療法が行われます。
認知症診療医が診察します
平山 貴敏 認知症診療医検索:公益社団法人 日本精神神経学会
よくあるご質問(Q&A)
最近、物忘れがひどくなった気がします。認知症でしょうか?
物忘れがひどいと感じる場合、大きく分けると加齢と認知症の2つの原因が考えられます。
加齢による物忘れは、体験の一部分を忘れる程度のものです。ヒントがあれば思い出すことができ、進行性はなく日常生活に大きな支障はきたしません。
認知症による物忘れは、体験したこと自体を忘れてしまいます。ヒントを与えられても思い出すことができず、進行性であり日常生活に支障をきたします。
少しでも気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)と診断されました。初期の認知症のことでしょうか?
軽度認知障害は、認知症を発症する一歩手前の状態ですので、初期の認知症とは異なります。記憶力や注意力などの認知機能にある程度異常は見られても、日常生活に支障をきたすほどではない状態です。
認知症になる前のできるだけ早い時期にこの状態を発見して、適切な対策を行うことで認知症への進行を防ぐことが出来ます。
認知症の発症を予防する方法はありますか?
認知症を完全に予防する方法はまだ確立されていませんが、認知症は生活習慣病と深い関係があること分かってきました。睡眠、食生活、運動などの生活習慣の改善は、生活習慣病の予防のみならず認知症の予防にも効果があります。
また日記を書いたり、買い物の時に暗算したりするなど、日々の生活の中で認知機能に良い刺激を与えるような脳のトレーニングも有効です。
認知症とは
認知症とは、さまざまな脳の病気により脳の神経細胞の働きが徐々に低下し認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態(およそ6か月以上継続)をいいます。認知症は病名ではなく、症状の集まりを意味する言葉です。
認知症の種類
認知症の種類はいくつかありますが、主要なものとして下記の4つが挙げられます。
アルツハイマー型認知症
認知症として最も多いタイプです。脳の神経細胞が減り、委縮することで症状が現れる認知症です。記憶障害(もの忘れ)から始まることが多く、失語(音として聞こえていても話がわかりにくい、物の名前がわからないなど)や、失認(視力は問題ないのに、目で見えた情報を形として把握し難い)、失行(手足の動きは問題ないのに、今までできていた動作を行えない)などが目立つこともあります。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症と同じく脳の病的な変化によって引き起こされます。実際にはないものが見える幻覚や、転びやすい、歩きにくいなどのパーキンソン症状、睡眠中に夢をみて叫んだりする等の症状を伴うことがあります。どの症状が先に出てくるかは人によって異なります。
脳血管性認知症
脳梗塞、脳出血などの血管障害が原因で一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり発症する認知症です。脳血管障害を起こした場所によって症状は異なりますが、麻痺などの体の症状を伴うことが少なくありません。また脳血管の閉塞や出血とともに、突然発症するという特徴があります。そのため症状が安定していると思っていたら、突発的に新たな症状が加わることもあり、改善と悪化を繰り返しながら、症状が進行します。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が目立って委縮することで発症する認知症です。性格変化や意欲低下などを生じる前頭葉症状と言語障害などが起こる側頭葉症状があります。物を盗むなどの反社会的行動、道徳観の低下、怒りやすくなるなどの人格変化や異常行動が認知症に先行します。また常同行動(同じ場所を周遊する・同じイスに座る)、落ち着きがない、同じフレーズを繰り返す反復言語やオウム返しなどの症状もみられます。
認知症の症状
認知症の症状は、大きく分けると2つの症状があります。
記憶障害を中心とした認知症の方に必ず見られる中核症状と本人の性格や環境の変化などの相互作用の結果として生じる行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)です。
中核症状
代表的な症状は記憶障害です。特に直前に起きたことを忘れるような症状(短期記憶障害)が顕著です。その一方で古い過去の記憶はよく残りますが、症状の進行とともにそれらも失われる傾向があります。また、筋道を立てた思考ができなくなる判断力の低下、時間や場所・名前などが分からなくなる見当識障害などがあります。
行動・心理症状(BPSD)
脳の障害により生じる精神症状や行動の異常をいいます。具体的には妄想・気分の落ち込み・不安などの精神症状と徘徊・興奮などの行動の異常が見られます。脳の障害を背景にその人の性格や環境、人間関係などが絡み合って起きるため症状は人それぞれ異なり、接する人や日時によっても大きく変わってきます。
認知症の治療
認知症の治療は薬物療法と心理療法を併用して行っていきます。脳血管性認知症等の外科的治療の対象となる疾患を除き、認知症を完全に治す治療法はまだありません。
しかしながら病状の進行を遅らせることは可能であり、治療は残された機能を維持しながら不安・不眠など日常生活の支障となる症状を軽減することが目的となります。
薬物療法
認知症の中核症状に対しては抗認知症薬を用います。行動・心理症状(BPSD)の改善を目的として不安や幻覚・妄想、徘徊には抗不安薬や抗精神病薬などを、睡眠障害には睡眠薬などを用います。怒りっぽさやイライラ感に漢方薬を用いることもあります。
心理療法
心理療法は、脳の活性化や残存機能を出来る限り長く維持することを目標に行います。見当識への刺激を与えることで認知機能の低下を防ぐリアリティ・オリエンテーションや、昔の記憶を思い出し、人に話したり聞いたりすることで認知機能の向上に効果が期待される回想法などの心理療法が行われます。
認知症診療医が診察します
よくあるご質問(Q&A)
最近、物忘れがひどくなった気がします。認知症でしょうか?
物忘れがひどいと感じる場合、大きく分けると加齢と認知症の2つの原因が考えられます。
加齢による物忘れは、体験の一部分を忘れる程度のものです。ヒントがあれば思い出すことができ、進行性はなく日常生活に大きな支障はきたしません。
認知症による物忘れは、体験したこと自体を忘れてしまいます。ヒントを与えられても思い出すことができず、進行性であり日常生活に支障をきたします。
少しでも気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)と診断されました。初期の認知症のことでしょうか?
軽度認知障害は、認知症を発症する一歩手前の状態ですので、初期の認知症とは異なります。記憶力や注意力などの認知機能にある程度異常は見られても、日常生活に支障をきたすほどではない状態です。
認知症になる前のできるだけ早い時期にこの状態を発見して、適切な対策を行うことで認知症への進行を防ぐことが出来ます。
認知症の発症を予防する方法はありますか?
認知症を完全に予防する方法はまだ確立されていませんが、認知症は生活習慣病と深い関係があること分かってきました。睡眠、食生活、運動などの生活習慣の改善は、生活習慣病の予防のみならず認知症の予防にも効果があります。
また日記を書いたり、買い物の時に暗算したりするなど、日々の生活の中で認知機能に良い刺激を与えるような脳のトレーニングも有効です。